鍛治邦雄君との対話
この論文を書くにあたっては、福島県いわき市に住む大学時代の友人「鍛治邦雄君」と議論を重ねた。また言葉につくせないほどの協
力をいただいた。ここに鍛治邦雄君との対話を掲載します。
2011年4月10日
鍛治邦雄 様
地震、如何でしたか?無事でしたか?
津波や原発トラブルがあったので気になっていました。
原発トラブルの収束や地域の再生にかなりの時間がかかりそうなので、大変だと思い ます。
なお、私のほうはいまのところ大きな問題はありません。
なにか私のほうで役にたつことがあればメールでご連絡下さい。( 衛藤正徳)
2011年4月16日
衛藤様
返信遅くなりました。
地震の被害はほとんどありませんが、終わりのない余震には参っております。4/11の後、余震は数百回起こっています。いつまで続くことやら、じっと我慢
です。我が家は原発から60km離れていますので、放射線量は健康に影響することはないと思いますが、それでも家庭菜園はやめた方がよさそうだし、外出 も控えがちです。今後数年間は忍耐ひとすじになりそうです。コーヒーの消費量は増えそうです。(鍛治)
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2011年5月3日
衛藤様
お元気のことと思います。
今日小包を受領しました。たくさんのお心尽くしに家族共々感謝しております。さっそく美味しくいただいております。
3.11と4.11にダブルパンチを食らいましたが、幸運にも我が家は大した傷も負わず、今のところ安泰です。
原発事故は、慌てても仕方がないのでじっと我慢の子に徹するのみです。いわき市は原発から30〜60km離れており、国の避難指
定地域ではありませんが、放射能汚染という風評被害は、大気、水道水、土壌、農産物、海産物、家畜及び人の放射能汚染へと伝播し、 時の経過とともにまるでボディーブローのように人々の日常生活を侵食してきています。岩手や宮城の復興はあっても福島の復興は 難航しそうです。昨日ボランティアで被災地に行ってどぶ掃除をやってきました。ボランティアは5日目です。添付ファイルは昨日の 被災地(薄磯地区)の状況です。人気は全くなく文字通りゴーストタウンです。
電源が切れたらおしまいというあまりにも稚拙なこの原発事故に対する憤りのはけ口はどこにもありません。最先端の科学を駆使して 安全宣言されたはずの原発がいとも簡単に破綻した現実を見るにつけ、人間の愚かさ、人知の儚さ、が身に沁みます。
”原発は電源が切れたらおしまい”ということが指摘されていながら、裁判所がそれを認めなかった、という判例があるようです。4/ 27にTBSテレビで放送された情報がネットに公開されていましたので、ご参考までに以下にコピーしました。
これをみると、今回の原発事故はまさに国の犯罪と言っても過言ではないと思われます。(鍛治)
〜 上記ネット公開記事のコピー〜
TBS
NEWS
唯一の原発差し止め判決の裏側
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4711647.html
唯一の原発差し止め判決の裏側
巨大地震が起こったら原発は大丈夫か?安全性については、これまで何度も法廷で争われてきました。全国8か所の原発で、住民が運 転差し止めの訴えを出して争いましたが、訴えは相次いで退けられています。そんな中、たった一度だけ住民の訴えが認められ、原発 の運転をしてはならないという判決が出たことがあります。
当時の裁判長が重い口を開きました。「原発事故は取り返しがつかない。原発事故を起こさないための司法の責任」元金沢地裁裁判長 ・井戸謙一氏。32年間、裁判官を努めてきた彼は、かつて民事裁判の歴史で極めて異例とされる判決を出しました。それが・・・ 「原発を運転してはならない」石川県にある志賀原発の2号機について、「電力会社の想定を超えた地震によって原発事故が起こり、 住民が被ばくする可能性がある 」として運転差し止めを命じたのです。原発の差し止めを求める住民訴訟はこれまで各地で起きてい ますが、訴えが認められた例はあ りません。「これが金沢で言い渡した判決。裁判官人生の中で一番記憶に残る事件」(原発の差し 止め判決を出した 井戸謙一元裁判長)
井戸元裁判長が初めてテレビの取材に応じました。
Q.判決を出すまでに一番大事にした軸は?
「生命、身体、生活環境に大変な影響、万が一、原発事故が起こると。一方で電気の供給など公共的な面もある。そのバランスの中で 、どこまで司法が関われるか、慎重に考えたいと思った」(原発の差し止め判決を出した 井戸謙一元裁判長)
このとき、井戸氏が書いた判決文にはこんなくだりがあります。「可能性として、外部電源の喪失。非常用電源の喪失。さまざまな故 障が同時に。多重防護が有効に機能するとは考えられない」
福島第一原発の事故を予言するかのような文字が並びます。(判決のシナリオがそのとおりになった・・・)
「判決をした原発とは違うが、危惧したものが現実になるというのは大変なショックでした。(福島第一原発の)事故が想定外なのか というと決してそうではないと思うし、そんなに軽々しく想定外という言葉を使うものではないと思う」(原発の差し止め判決を出し た 井戸謙一元裁判長)
原発事故を想定しえた判決。判決は、地震で事故が起こった場合、その被害は取り返しがつかないという住民の訴えに重きを置いたものです。
「人間の知恵なんて知れている。地球のこと、地震についてどれだけのことが分かっているか、そこには謙虚にならないといけない。事故に備える、地震に
備えるという姿勢がやはり電力会社に必要なのでは」(原発の差し止め判決を出した 井戸謙一元裁判長)
原発の差し止め訴訟は全国8か所で行われてきましたが、「原発の地震対策は妥当である」などとして、住民の訴えが認められることはありませんでした。志 賀原発についても、控訴審で「国の耐震指針に適合していて問題はない」などとして、住民側が逆転敗訴しました。
志賀原発は一審判決の後、1200か所にわたる耐震の改善工事を実施。安全性を高めてきました。ですが・・・発生したレベル7の事故。志賀原発を抱える
地元にも動揺が広がりました。 「この近くで何かあったとき、子供たちがどうなるだろう、そういう思いは強い」志賀原発から10キロの場所に住む友禅作家の 志田弘子さん。原発の差し止めを求めた原告の一人です。福島の事故以降、町の空気が変わったといいます。「みんなが信じようとしていたものに、なんか
裏切られたような。みんなが不安を持っている声がいっぱい聞こえるようになった」(志賀原発の近くに住む 志田弘子さん)
志賀町で先週行われた町議会選挙では原発訴訟のリーダーがトップ当選。収まらない不安が裏付けられた形です。一方で北陸電力は、事故を想定した訓
練を行なったり、大津波を防ぐ防潮堤の建設など、安全強化策を発表。「さらなる安全性に万全を期し、わかりやすく丁寧に説明していきたい」とコメントしてい ます。
Q.裁判所自体も、ある種安全神話に乗っかっていた点はある?
「結果として、司法はほとんどが今までの原子力行政、あるいは電力会社の仕事を追認してきたわけで、そこでいろいろな警告を発していれば、こういう事態 はなかったかもしれない。最後の砦であるという自覚をより深刻に持って仕事することが、これからの裁判官に求められるのではないか」(原発の差し止め
判決を出した
井戸謙一元裁判長)(27日23:15)
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2011年5月4日
鍛治邦雄 様 奥 様
荷物が届いてよかったです。今 新緑がきれいです。裁判所の記事をありがとうございます。
自然は復元力があり、ほとんどなにもしなくても元に戻りますが、
人間が作り出した原発は、事故がおこるとその影響は広範囲にしかも長く及び、人・モノ・金・時間をつぎこまないと元に戻りません。
私は東日本の復興・再生やエネルギ―問題について次のように考えています。
今、データをあつめて、考えをまとめようと思っているところです。これからどうやって東日本そして日本を復興していくかが問題です。
社会・経済・安全の面で。地域再生の問題や原発の放射能汚染の問題そしてエネルギーの問題が出ています。
東日本の復興・再生は急を要し、巨額の金も必要で、これに税金が充てられるわけで、日本全体では景気対策が出来そうにありません。景気が良くなる要 素が見当たりませんね。防衛予算のうち、兵器購入費は災害対策費にまわすとかするとよいと思っていますが・・・。
エネルギーの問題に関して言えば、私は地震国で過密な日本では原発をやめ、放射能汚染がなく、環境汚染のすくない太陽光発電、地熱発電、風力発電
などの自然エネルギーを中心に据え、これに既往の水力、火力で賄うのが良策と考えています。とくに太陽光発電は進歩が著しく、簡単に設置でき、家
庭の電力のかなりの部分を補えるようになってきています。太陽光発電で世界一になれば、日本がエネルギー自給国、技術立国、環境保全国として世界
に認められるかもしれません。(衛藤 正徳)
2011年5月11日(1)
衛藤様
ご返信遅くなりました。
「原発革命」(古川和夫著)という本には、ウランではなくトリウムを燃料として使えば原発は安全であると書いてあります。ウランを燃料とした原発技術は軍
事的には有用であるが原爆があるがトリウムを燃料とした原発技術は軍事用には利用しにくいので、米国はトリウム原発の開発を排除した、ということも書
いてあります。原子力エネルギーの平和利用を可能にすることは人類にとって必要なことと思います。一読をお勧めします。 (鍛治)
2011年5月11日(2)
鍛治 邦雄 様
「原発革命」(古川和夫著)は買って読んでみようと思います。いずれにしても、エネルギー政策は日本の命運を握っていると考えています。
これからも議論させていただければありがたい。(衛藤正徳)
2011年5月11日(3)
衞藤様
1昨日から今日までチェルノブイリ関連のTV番組(3夜連続)をやっています。
1昨日の日本のNHKが編集した番組はチェルノブイリの悲惨さを訴え、人類と地球に対する原発の負の部分を強調していました。
昨日のフランスで制作された番組は、チェルノブイリ周辺に@人がいなくなったことで動物や植物の多様性が増して広大な自然が甦った、A低レベルの放
射線の中では動物は放射線に対する耐性ができる、というような内容です。科学的に間違ってはいないのだろうと思いますが、明らかに原発を肯定した内
容です。更にBチェルノブイリ周辺を世界の使用済み核燃料の保管庫にしたい、とも言っていました。フランスは原発を世界に売り込むためにこんなことまで
やっているのですね。 今夜は第3話があります。(鍛治)
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2011年5月12日
鍛治 邦雄 様
メールと情報を有難うございます。
私の率直な感想意見を述べます。
フランスは貴兄の言うように原発を世界とくに日本に売り込もうとしているのだと思 います。
チェルノブイリ周辺に動物や植物の多様性が増して広大な自然が甦った、A低レベル の放射線の中では動物は放射線に対する耐性ができるとしています が、すくなくとも人間や動物が放射能の後遺症なく、住めるという確証が科学的にあるのか?疑問です。ここで考えているのは低レベル放
射能の長期にわ
たる影響です。 それも胎児―乳幼児−小学制―中学生―高校生にいたる成長過程にいる子供たちへの 影響です。
NHKのように、原発は正の部分より、負の部分が大きいものであると認識していないと、第3のチェルノブリが誕生しかねません。
事故が起こってからでは遅いので、事故が起こらないようにするにはどうすればよい かを考えないといけないと思います。
これらのことに関してきちんとしたデータがないように思います。このようなデータがあったら教えて下さい。(衛藤 正徳)
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2011年5月13日
衞藤様
私のメールの内容が不正確で誤解があったようですので追記します。
”動物は放射線に対する耐性ができる”というのはネズミなどの一部の動物について事故後の解析結果です。人間を含めたすべての動物が放射能の後遺
症なく住めるということを主張したものではありません。
番組が言いたかったのは、きちんと科学的に検証すれば放射能と共存できる可能性がある、ということではないかと思います。原発を肯定するフランスの立
場を肯定するための政策的番組です。
昨日のチェルノブイリ事故関連番組第3話はドイツで制作されたもので、事故後の処理作業の状況、当時の作業員の無残な死に様、などのドキュメンタリー
でした。ソ連という国の無責任さを痛感しました。
添付ファイルは今日(5/12)のTV番組(プライムニュース)で紹介された発電単価です。
原発の場合はこれに、@原発村への政府の補助金、A使用済み核燃料の再処理費用、B安全確保のための追加設備費用、などを加算すると10円/kw
以上になろう、と番組では言っていました。福島原発事故のような被害に対する補償金も含めれば更に高くなります。(鍛治)
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2011年5月16日(1)
鍛治 邦雄 様
発電方法とその比較をまとめてみましたので、ご参考までに送ります。
貴兄から頂いた発電単価も入れてあります。これは、主として新聞記事などを参考に私なりにまとめたものです。異論もあると思います。気がついたことがあ
ればご連絡下さい。
最近は雨が多く、梅雨がきたような感じです。皐月晴れになれば、気分も少しは晴 れやかになるのですが。
それにしても、原発の事故の収束の見通しがつきませんね。現場の人たちは精いっぱい努力しているのでしょうが・・・。
技術力が未熟だったとしか思えません。( 衛藤 正徳)
2011年5月16日(2)
衞藤様
さっそく資料を拝見しました。気が付いた点は下記の通りです。
1.添付ファイルにおいて、赤字部を追加しました。青字部(「為替」)の意味がよくわかりません。
今まで世界で発生した原発事故は5件あってそのうち3件が日本で起こっている、とフランスのメディアが言っています。
2.原発の発電単価は、「10<」(@原発村への政府の補助金、A使用済み核燃料の再処理費用、B安全確保のための追加設備 費用、などを加算推定)、 とした方が他と比較する数値として正しいと思います。
3.私は、ウラン燃料ではなく、トリウムを燃料とした原発に興味があります。(先に紹介した「原発革命」参照。)
原発方式 ウランを燃料とした原発 トリウムを燃料とした原発
原爆製造可否 可能 不可能
使用済み燃料の再処理 必須
不要
トリウムを燃料とした原発が安全なものであれば、その早急な実現を図ること望まれます。太陽光や風力などの代替エネルギーだけでは人類に必要なエネ
ルギーを確保することは当面(20〜30年間)は難しいと思われます。原子力を排除するのではなく、原子力の安全な利用のための検討は必要と考えます。
もちろん現在のウラン原発は廃棄の方向です。
昨日から飯館村の強制集団避難が始まりました。数十マイクロシーベルトという異常に高い放射能の中で退去を余儀なくされた住民の無念はいかばかりか
と胸が痛みます。東電は、これら住民の「土地・家屋・家畜等」の所有権を一方的に侵害しました。「所有権」は「民法」によって日本国民に与えられた基本的 権利です。今回の原発事故による避難者は所有権侵害で東電を訴えるべきと思います。所有権(しょゆうけん)とは、物を自分のものとして支配する権利。
法律的には、所有する者(所有者)が「法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする」権利(民法第206条)。(鍛治)
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2011年6月5日
鍛治 邦雄 様
梅雨の時期を迎えました。その後いかがお過ごしですか?
遅くなりましたが、以前頂いた下記のメールについての感想と意見を書きます。
1.「為替」は間違いです。「需給バランス」です。石油などの価格は本来、需給バ>
ランスできまるものですが、石油の輸入量と価格は産油国の考えに左右
される。
2.原発の発電単価ですが、浜岡原発について、出力あたりの建設費(日本の原子力>
施設全データより)をだすと30円強になる。この計算が正しいかどう
か 疑問もありますが・・・。
3.トリウム原発(Th232)は貴兄が指摘するように、原爆製造に向かないようです。また廃棄物も1000分の1と少ないようです。ところで、Th232は原子炉 でTh232−U233(核分裂性核種)−Th229(半減期7340年)と変化するようです。崩壊生成物に至る過程でU233(核分裂性核種)ができます。これは原
爆にも使用できるのではありませんか? また崩壊生成物として半減期の長いTh229(半減期7340年)ができます。半減期が7340年というのはすこし問
題があるように思います。
4.原発エネルギーの代替エネルギー(自然エネルギー)への移行ですが、原発をいきなりすべて止めるのではありません。まず、1つの原発に相当する、地 域にあった代替エネルギ―施設を作り、稼働させ、それからその原発を停止し、廃炉にする。このような方法でエネルギー源を切り替えていけば、時間はか かるが、十分可能だとおもいますが、いかがでしょうか?
5.東電を所有権侵害で訴える件について この問題に対する私の意見ですが、まず、所有財産に相当する額のお金・代替地を請求すべきだと思います。こ の請求が通らなければ訴えればよいとおもいます。訴訟は時間と費用がかかりますから。この件については弁護士を入れたほうがよいと思います。(衛藤)
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2011年6月18日
衞藤様
今日も朝から雨模様で梅雨らしくなってきました。
トリウム原発についてネットで添付ファイル(3編)を検索しました。ご参考までに。 下記3.についてですが、Th232の崩壊生成物に至る過程でできるU233
(核分裂性核種)は トリウム原発(溶融塩原子炉)から取り出すことができないので、原爆の製造には使えないよう です。(添付ファイル参照)。貴兄のご指
摘のようにTh229の半減期が長いという問題も含めて他にも細かい問題があるのか もしれませんが、原子力の平和利用のひとつの手段として、「ウラン原
発」よりもはるかに安全に 「トリウム原発」を実現できる可能性はあるのではないかと思います。 下記4.の自然エネルギーへの移行については私も貴兄の 意見と同じです。
「原発革命」の続編として「原発安全革命」が最近出版されたようです。 現在の日本の状況は、国と電力会社が結託して「ウラン原発を推 進する」、という雰囲気があり
心配です。( 鍛治)
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2011年6月19日(1)
鍛治 邦雄 様
トリウム原発の資料をありがとうございます。参考にさせていただきます。トリウム原発については、資料をよんでから、議論させていただきます。
今日、メールしましたのは、今日の朝日新聞の朝刊一面に「汚染水の浄化装置停止」の記事が出ていました。トラブルの原因が「汚染水中の汚泥などの不
純物」と書かれていました。浄化装置の専門の技術者がいないのでしょうか?水処理のプラントを扱った技術者なら、トラブルに対応でき、解決できるように
思います。私見ですが、トラブルの一つの解決案は油分離装置とセシュウム吸着装置の間に、粗ろ過をする固液分離装置を置き、汚染水中の汚泥などの不 純物を除去すればよいと思います。参考までに私見を書きました。(
衛藤)
2011年6月19日(2)
衛藤様
全く同感です。本件はまさに貴兄の出番です。(鍛治)
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2011年7月5日
衛藤様
返信大変遅くなりすみません。 パソコンが故障して6/20に修理に出していましたが、今日やっと戻ってきました。メモリーが皆復 帰しているのでホッとしました。
1.東電の汚染水処理状況は本当にお粗末ですね。貴兄のいうとおり沈殿槽の後に吸着層を配置すべきと思います。電気会社には、電 気の専門家ばかりで、装置設計者がいないように思えます。
2.トリウム原発
1)5/2に「原発安全革命」(古川和夫著)が出版されました。内容は先にご紹介した初版とほぼ同じです。ウランと違って、福島 原発のような事故が起こらない絶対安全な原発であると主張されています。私はこれまでそれを信じていましたが、よく読んでみる と、トリウム原発はウラン原発に比べて確率は低いといえども、重大事故につながる危険性は残る、という見解に達しました。
2)トリウム原発は、液状のトリウム燃料の中に個体の黒鉛(核分裂反応の促進剤)を入れて核分裂を持続させます。地震やツナミな どの異常事態が発生したとき、この装置の下部にある弁を開いて液状の燃料を下方に排出すれば、黒鉛のない液状物だけでは核分裂 反応を継続できないので自然に核分裂は停止する。従って危険はない、と主張されています。
しかし、この装置が地震でいきなり横倒しになった場合は、その後上記の弁を開いても液状物は落下しません。つまり黒鉛と液状物 が分離できないため核分裂反応は継続することになり、更にこの状態で全ての電源が切れた場合には福島原発を超える重大な事故に 発展すると推察されます。
形あるものは必ず自然の力によって予期せぬ壊れ方をする可能性があり、そのような事態を想定してプラントは造られなければなら ない、という貴兄の考え方は正しいと思います。一昨日TVの対談で大江健三郎氏が、「人間は、危険だと感じたときは、その道を 選択してはならない。」と言っていました。
上記のような理由で、私はトリウム原発はウラン原発より安全性において遥かにすぐれているが、絶対安全とはいえない、という見 解に至りました。
私は原発の専門家ではないので、これ以上のことはいえませんが、人類が発見した原子力という巨大なエネルギーをなんとか平和的 に利用できないものか、という願望も持っています。トリウム原発の研究者に更なる安全性を確立してくれることを期待したいと思 います。(鍛治)
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2011年7月26日
衛藤様
暑い日が続いています。いかがお過ごしでしょうか。テレビ番組「BS世界のドキュメンタリー」で、フランスやロシアの使用済み核 燃料の処理状況が克明に語られていました。20万年後まで使用済み核燃料を管理し続けねばならないこの現実を、天文科学者が「人 類は未来を担保にしてしまった。」と嘆いていました。チェルノブイリ事故以前に当時のソ連は核開発中に事故を起こし、現在もなお モルモット化的な状態におかれている住民が多数いることも報じていました。
7/21の朝日新聞に、@ウランを原料とした原発から出る使用済み廃棄物から原爆を作ることができる、
A日本は既に原爆を1250個も作れる使用済み廃棄物(プルトニウム)を確保している、
B日本の原発を推進した当時の中曽根元総理大臣が原発は安全ではないから太陽熱発電の方がよいと、自らの これまでの考えを変更する発言をした、という記事が載っていました。(添付ファイル参照)
いずれにしても、ウラン原発廃止の方向は正しいと思います。
(トリウム原発については灰色なので今後の検討を待つことにしたいと 思います。)(鍛治)
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2011年9月15日
鍛治 邦雄 様
先日は、コーヒーのご注文ありがとうございました。
まだまだ暑いものの、ようやく秋らしくなってきました。
脱原発について小論文を書きました。添付いたしました。未公表です。読んでいただき、ご意見をいただければ幸いです。(衛藤 正徳)
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2011年9月17日
衛藤様
早速資料を読ませていただきました。記載事項については全く同感です。
使用済み核燃料が下記の問題を有することが現在の原発の致命的欠陥のひとつであることを追加した方がよいのではないでしょうか?
@原爆を作るためのプルトニウムを含む。(→原子力の平和利用の嘘)
A処理手段が確立されていない状態でいたずらに山積みにされている。(→未完成の技術を商業目的に使おうとした業界と国と原子力学会の悪行)
Bその使用済み核燃料は少なくとも3年間は常時冷却しなければならず冷却が途絶えれば大惨事に至る。(→安全神話の嘘)
即ち、現在の原発は作ってはいけないものであったにも関わらず、国が国民を騙して危険をかえりみずに強引に作ってしまったものである、ということを明記
する必要はないでしょうか?
これまで原発で多くの事故が起こっており、特に今回の福島第一原発事故が起こったから原発はやめることにしましょう、というのでは政府の見解と全く同じ になる可能性があります。そうではなく、もともとこの原発は科学的に欠陥品であって、作ってはいけないものであったのだからやめることにしましょう、という 話にした方が私は素直に理解できます。
仮に日本が半世紀前から、原発ではなく、自然エネルギーの開発に全精力を注いでいれば、今頃は世界に冠たる自然エネルギー立国になっていたと思わ
れます。
従来(原発事故前)私は原発に無知であったため、原発推進賛成派でした。科学の力で原子力という巨大なエネルギーを活用することはよいことではないか、 という単純な考えからです。しかし、今回の事故で各種報道(TV、新聞、雑誌など)から情報を得て、原発の安全性に関する致命的な不備の多さに愕然と致
しました。現在私は脱原発派です。私は日本が原発を作ったことは日本政府の国民に対する犯罪であると思っております。
私の近隣で収穫されたお米から100ベクレル/kgのセシウムが検出されています。いわきの海で採れるウニは900ベクレル/kg、まこがれいは300ベク
レル/kg、です。川で採れる鮎も数百ベクレルです。今後数十年間は近海の魚は食べられません。近くの山で採れるきのこのセシウムは1000ベクレルを
超えています。もはや里山でのきのこ狩りは今後数十年間はできないでしょう。ハウス内での栽培されている野菜が多いので毎日の食生活はそんなに変わ ることはないとは思いますが。
この鬱積した気分はまさに下記の一句に尽きます。
”山河嘯くや銀漢に投網打つ”
「銀漢」とは「天の川」のことです。
例年であれば数十万人の海水浴客で賑わういわき七浜には、今年の夏はひとりも来ませんでした。
”言霊の果てフクシマの夏の海”
「言霊(ことだま)」とは「原発の安全神話」のことです。(鍛治)
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2011年9月18日
鍛治 邦雄 様
すばらしい意見です。ありがとうございました。(
衛藤正徳)
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