(第2部)
現在の生活水準を維持しながら地球環境を改善する方法
風力発電・ゴミ発電・溶鉱炉やコンクリート製造など、高温で生産している装置の廃熱を利用した発電は、日本の発電量の数パーセントにも満たない状況です。
燃料電池が開発されていますが、水素は石油から得られており、その他の燃料を使用しても結局、石油や天然ガスという化石燃料を使うことになるのです。
石油・石炭・天然ガス(主成分はメタン)を化石燃料というのは、何億年も前から生い繁った植物や当時栄えた恐竜などの動物が、地中深く埋もれて長い年月に変質して出来たといわれているからです。だから、大昔の太陽エネルギーが吸収されて蓄積された状態とも言えるのです。それらを燃やすと炭酸ガス・水ができるだけでなく、大昔の太陽熱まで放出されることになり、地球がどんどん暖かくなるのもあたりまえなのです。そのためにも、早く化石燃料の使用量を減らさなければいけないのです。メタンハイドレードなどという、地下深く埋まっている「氷水に溶けているメタンガス」を取り出そうとするのは、石油や石炭を取り出すのと同様に愚かなことです。
せっかく余分なエネルギーを化石燃料という形で地中に閉じ込めてくれているのに、それを取り出して使うというのは自然の摂理に反していると思いませんか?現在、地表で作られている資源、すなわち植物を利用したほうが自然の摂理に適っていると思われます。
エネルギー源・工業原料の転換「植物の有効利用」
植物の主成分
セルロース(植物繊維の主成分) ブドウ糖―ブドウ糖―・・・―ブドウ糖
ブドウ糖が六千個以上繋がっている
植物の体内で、水分を除くと六十%〜八十%はセルロースである
でんぷん ブドウ糖―ブドウ糖―・・・・―ブドウ糖
ブドウ糖が百個から十万個繋がっている
トウモロコシ・イモ類・米類・麦類に多く含まれている
植物は水と炭酸ガスと光からブドウ糖を合成している
だから でんぷんやセルロースを燃やしても水と炭酸ガスしか発生しません。 植物の資源化が急がれる訳です。たんぱく質には燃えると酸性の有毒ガスとなるイオウやチッソが含まれるので肥料か飼料に利用する方が良いと思われます。
地球環境を守るための世界会議が数年前京都で開かれ、合意された「京都議定書」では、植物から得られた物を燃やしても炭酸ガスを発生させたとは計算されないし、植林すれば炭酸ガスの発生を減らしたと計算されるようです。
だからブドウ糖を燃料にする燃料電池が開発されれば、環境改善に大いに貢献すると思はれます。森林は貯水池の役目を果たしますし、温和な気候化に寄与しますので、木材や草の有効利用の研究開発・実用化に国家予算も人材も重点配分すべきと思います。ゴルフ場が開発される前は夏でも水が枯れたことのない近くの小川が、ゴルフ場のために森から芝生になると、夏の水枯れ・大雨後の洪水を起こすように変わってしまったそうです。やはり森は貯水池なのです。
穀物を収穫した残りの茎や葉の利用も含めて植物の資源化が進めば、地域内での自給自足率が高くなるので、過度に貿易量を増やさなくてもよくなります。熱帯地方など後進国でも植林が成功し、資源化の技術が確立すれば、水もエネルギーも工業原料も得られます。無理に農産物を輸出しなくても、豊かに生活できるようになるでしょう。そして、日本への農産物の輸入促進の圧力も減り、農家も助かるようになると予想されます。また、熱帯雨林の伐採による焼畑農業を減らすことも可能になり、それは地球環境の悪化防止に役立つと思われます。但し、人口増加に対する対策は必要でしょう。
利用可能な植物量は石油・石炭・天然ガスの生産量と同じくらいかそれ以上ありそうです。
化学工業では高温高圧の反応も多くエネルギーの多消費型でありますが、酵素や微生物を利用すれば一気圧・四十度ぐらいで製造できます。
セルロースを使った工業は、かっては盛んでした。人絹・スフ・セルロイド・セロハンテープ・セルロース系プラスティック(それについての日本工業規格すなわちJIS規格もあります)などがあります。パラシュートの紐に人絹が使われていた時代もあったそうです。価格・風合いなどで合成繊維に置き換わっていきました。
トウモロコシでんぷんから作られる、微生物分解性プラスティックが工業生産され始めました。一般に使われているプラスティックの三倍から五倍の価格なのに環境にやさしいとトヨタやユニチカなどの大手企業も実用化に力をいれているようです。トヨタはでんぷん質の多いサツマイモの苗作りからはじめ、その栽培農園も九州に持っているとのことです。価格も大切ですが理念も大事です。そのプラスティックを開発したのはアメリカの会社で、基本的考えは欧米のほうが進んでいるのかもしれません。
石油などを燃やして発生した炭酸ガスを海水に溶かすことが検討されておりますが、植物の資源化と比べると地球のバランスをとるという点から首をひねってしまいます。火力発電で生じた炭酸ガスをすべて微生物に吸収させる研究も行われています。
以上のことより、もっと多く植物を資源として利用すべきでしょうし、そのための研究開発・技術開発の速度を上げるべきだと思います。製紙会社の技術者によると、現在は木材から直物繊維(セルロース)を有効に分離するのに微生物や酵素を利用するのが一番良い方法のようでいろいろな技術も開発されているようです。
ご先祖様のお陰で今の便利な生活がある 子孫により良い地球環境を残してあげたい より多くの人が環境改善に関心をもち真剣に考えてほしいと思います
自分たちは、先祖のお陰で地下のお宝(石炭・石油など)を使わせていただき、その結果住みにくい地球にしてしまった上、子孫には地下にゴミだけ残したのでは申し訳ないと思いませんか?
研究者は高い評価を受けたいため、世論に受け入れられ易いテーマを選ぶ傾向があります。今は遺伝子関係のテーマがそうです。技術者の大半は与えられた仕事以外には、自発的に開発テーマを選ぶことが難しいのです。だから世論の働きかけが必要なのです。
是非、自然の摂理にかなっている「植物を資源としてもっと多く利用することが促進されるよう」願ってください。
衆流あつまりて大海となる。微塵つもりて須弥山となれり。日蓮が法華経を信じ始めしは日本国には一滞一微塵のごとし。法華経を二人・三人・十人・百千万億人唱え伝うるほどならば、妙覚の須弥山ともなり、大涅槃の大海ともなるべし。仏になる道は此れよりほかに又もとむる事なかれ。 日蓮上人 撰時抄にいわく
多くの人の理想的な願いは素晴らしい力になるという事です。
「少欲知足」で控えめの生活を心がけ、植物の資源化がもっと促進されるようを願って下さい
世界的な視野で考え、経済的発展のみにとらわれずに、地元で質素に生活していく人生も良いのではないでしょうか
追記
この話は師僧である先代の御前さんにして頂きたいと思っておりましたが、お忙しそうでお頼みするのを躊躇しているうちに体調を崩されてしまいました。そこで、「聞法の夕べ」で六月に話をする順番になったとき、この話をしようと思いました。七月にご遷化されてしまいましたので先代の御前さん(法華経寺の前貫首さん)にも聞いていただくつもりであえて難しそうな話をさせていただきました。
平成十五年十月二十五日 海上山 妙福寺「聞法の夕べ」での法話に加筆訂正す
以上
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